ささもと こどもクリニック News Letter vol.14 no.8 (2015.8.15)
Tel: 0424-98-4153(ﾖｲｺｻﾝ) Fax: 042-498-4154
http://homepage3.nifty.com/sasamotokc/
【離乳食とスプーン】
赤ちゃんに離乳食を食べさせるときにスプーンを使うことが多いと思います。お母さんの中には、離乳食が口から出ないようにしっかり食べさせようと、スプーンを口の奥まで入れてしまう方もいらっしゃいます。しかしこれはあまり好ましくありません。離乳食を始める時には唇で食べ物を取り込む練習が必要なのです。赤ちゃんは口の前の方で食べ物を取り込むと、舌でそれを上あごに押し付けて大きさや硬さを感じ取り、舌を使って左右の歯ぐきや歯に持ってゆき、「かむ」練習をしながら飲み込みます。でもスプーンで口の奥まで入れると、丸呑みになってしまうのです。
実は離乳食を食べない赤ちゃんの中に、本当は離乳食嫌いでなくスプーン嫌いだったという場合もあるようです。食べ物の味、特に甘味は舌の前の方で感じ、苦味は舌の奥の方で感じられるため、スプーンで口の奥に入れられると、苦いだけでおいしくなく、特に金属製スプーンだったら、金属の味もしてしまいます。これでは離乳食を食べませんよね。食べ物は口の前の方においたり、もしくはいっそのことスプーンを使わず、離乳食をお母さんの指につけて、それを舐めさせたりすると、赤ちゃんもおいしさを充分に感じ、離乳食を食べるようになる場合もあります。
【アレルギーひとくちメモ】
生後すぐからの保湿でアトピー予防。国立成育医療研究センター研究所副所長斎藤博久先生、アレルギー科医長大矢幸弘先生のグループが、2010-13年にかけて調査し、2014年秋に発表した研究結果です。
それによると新生児期（生後1週間）から保湿剤を塗布することによりアトピー性皮膚炎の発症リスクが３割以上低下することが分かりました。調査の方法は、父母や兄弟にアトピー性皮膚炎患者さんがいる新生児118人を、2つのグループに分け、１つ目のグループ（介入群）では、「毎日入浴、1日1回以上同じ保湿剤を平均で7.8g全身塗布」、2つ目（対照群）では「毎日入浴、乾燥した所のみにワセリン塗布（結局1日0.1g程度）」として、約8ヶ月間観察しました。その結果が、上記のように“アトピー性皮膚炎になる人が3割減った”となったようです。また２つの群の間では血液検査での卵の陽性率にははっきりした差はありませんでしたが、湿疹（アトピー性皮膚炎）が見られた赤ちゃんの方が、湿疹のない赤ちゃんより、陽性率が高くなっていました。つまり「湿疹の存在は食物への感作を増やし、食物アレルギーの危険因子になる」可能性があるようです。
今までアレルギー疾患の発症予防については、「妊婦の卵や牛乳などの食物制限」、「離乳食の開始を遅くする」などの試みがされてきましたがほとんど失敗していました。今回新生児期からの保湿剤の使用が、アレルギー性疾患であるアトピー性皮膚炎の発症を予防し、それにより食物アレルギーの予防にもつながる可能性がある、という結果が得られたことは、将来アレルギーで苦しむお子さんが減っていくための第一歩となっていくのではないでしょうか。
