ささもと こどもクリニック News Letter vol.22 no.8 (2022.8.15)
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【小児コロナワクチン努力義務へ】
先日、予防接種に詳しい菅谷明則先生の講演を聴きましたので、その中からお話しします。コロナワクチンを接種した人は20歳以上で80%以上ですが、小児（5-11歳)では、15-20％です。ワクチンへの不安や、子供はコロナに罹っても軽症だから、というのがその理由だと思われますが、この春以降のオミクロン株の流行で状況は変わってきたようです。
6月上旬の時点でこどもの患者数はオミクロンが流行前（つまりデルタ株まで）に比べて13倍になったそうです。今までに新型コロナで亡くなった20歳未満の方は約20例ですが、10歳未満のお子さんが亡くなった例も８例あり、かつその方たちは全員オミクロンが流行した後だそうです。重症例もオミクロン流行後に増えたようです。重症例での症状は、けいれん、そしてクループです。けいれんはそもそも熱性けいれんを起こす年齢（０−４歳）だけでなく、本来熱性けいれんを起こしにくい5-11歳でもオミクロン流行前の2倍以上に増えたようです。入院例も増えていて、“罹っても軽症”とは言いきれないようです。米国ではインフルエンザでの入院数を上回っているようです。
そのような事情から最近、小児へのワクチンは推奨から、努力義務（受けさせるように努めなければならない。四種混合やMRと同じ扱いです）に引き上げられました。国内全体で小児でのワクチンの効果をまとめたものはまだないのですが、神奈川県の5-11歳での報告だと、この4月以降の新型コロナの罹患率は、ワクチン2回接種者は未接種者の約1/3になっています。なお、1回接種者はその中間になっています。ワクチンの副反応ですが、12歳以上に比べて少なく、発熱が4-6％程度です。当初心配されていた心筋炎も少なく、コロナに罹った時の心筋炎よりも軽症で回復も早いそうです。先生の結論は、“接種を勧めるべき、重症化することがあるので接種しましょう”とのことでした。
【アレルギーひとくちメモ】
新しいアトピーの内服薬。関節リウマチの治療薬のリンヴォックという内服薬が、2021年からアトピー性皮膚炎にも使えるようになりました。リンヴォックは、炎症の信号を伝えるヤヌスキナーゼ(JAK)の作用を抑えることで、炎症やかゆみを抑えることができます。1日1回の飲み薬です。ただ使用できる方は、ステロイドやプロトピックなどの抗炎症外用薬を使っても十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎の方ですので、重度のアトピー性皮膚炎の方になると思います。効果発現も早く、すみやかにかゆみや湿疹の改善が期待できます。
使用する前にはレントゲンや血液検査が必要です。それは潜在している感染症を悪化させる可能性があるため、結核やＢ型肝炎ウィルスに感染しているかどうかを前もって調べるためです。また使用後もニキビや帯状疱疹などが現れることもあるので、定期的な検査が必要です。また薬剤の金額が高価なので、自己負担のある方は、高額療養費の制度をお使いになったほうがよいかと思います。アトピーでお悩みの方には朗報となるのでは、と思います。
