ささもと こどもクリニック News Letter vol.23 no.5 (2023.5.15)
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【シングリックス：帯状疱疹予防ワクチン】
帯状疱疹は子供の時にかかった水痘（水ぼうそう）のウィルスによって引き起こされ、80歳までに3人に1人がかかります。
子どものときに感染した水痘ウィルスは神経節に何十年も潜んでいて、免疫機能が低下したときに、再び活性化して、神経に沿って広がっていきます。そのため最初に神経痛のような痛みが出現します。衣服が触れても痛いようです。そして数日後に小水疱を伴った帯状の発赤が現れます。約３週間で治癒しますが、その後帯状疱疹後神経痛（PHN）といって、痛みが３か月以上にわたり残る場合があります（50歳以上の20%の方、80歳以上だと32%）。その痛みはとても辛いようで、中には顔の痛みのために、うつ状態になってしまう方もいます。
帯状疱疹の予防のために50歳以上で使用できるワクチンが2つあります。１つ目は小児でも使用している水痘ワクチン（生ワクチン）、もう一つは帯状疱疹専用のワクチン（シングリックス、2回接種）です。生ワクチンは、アメリカでのデータですが、有効率が60-70歳で約60%、70歳代で40%、80歳以上で20%足らず、と言われています。一方のシングリックスは50歳以上15000人以上の国内データによると、接種しなかった群では4年間で帯状疱疹にかかった人が7415人中210人（うち18人がPHN発症）だったのに対し、接種群では7344人中6人（PHNは0人）と有効率は97％という結果でした。70歳以上の方でも有効率は約90％でした。また予防効果は10年間続くようです。
アメリカでは現在、帯状疱疹の予防に生ワクチンは使われなくなりました。このようにシングレックスの方が効果は高いようですが、生ワクチンに比して高額です。2回接種で40000円以上です。でも10年効果があるので1年4000円と、インフルエンザワクチンより低額と考えることもできそうです。さらに調布市でもこの夏からは助成があるようですので、利用されるとよいと思います。
【アレルギーひとくちメモ】
アトピー積極治療で卵アレルギー予防。成育医療センターでの研究結果です。アトピー性皮膚炎（AD）と診断された生後７～13週の赤ちゃんを、①湿疹がある部分だけにステロイドを塗る「通常の治療」をするグループと、②湿疹がない部分も含め、全身にステロイドを塗る「積極的な治療」をするグループに分けて、卵アレルギーの有無を生後28週の時点で検査しました。
その結果「通常治療」の41.9％に比べて「積極治療」では、31.4％と、割合が低くなっていました。卵の成分が湿疹のある皮膚から入ることで、卵アレルギーになりやすくなるといわれています。全身にステロイドを塗って卵アレルギーが減るということは、見た目では湿疹がない部分からも卵が入り込んでしまうためと推察されます。（朝日新聞。2023.5.10朝刊）
