ささもと こどもクリニック News Letter vol.23 no.9 (2023.9.15)
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【はやり目】
結膜は白目の表面と、それにつながる瞼の裏側を覆う粘膜です。あっかんべーの赤い部分も結膜です。結膜炎になると白目が充血して赤くなり、目やにや涙がでます。瞼が腫れることもあります。結膜炎は細菌やウィルスの感染、アレルギー反応、ドライアイなどでも起こります。
ウィルス性結膜炎のうち、人に移りやすいものをはやり目といいます。それにはアデノウィルス（3型、４型、７型）による咽頭結膜熱（プール熱：長期間の発熱や咽頭発赤を伴います）や、エンテロウィルス70型による急性出血性結膜炎（眼球結膜に出血をおこします）などがありますが、はやり目の代表は、アデノウィルス4型8型19型などによって引き起こされる流行性角結膜炎（EKC）でしょう。感染して7-14日後に発病します。症状が非常に強く、私も以前罹ったことがありますが、かゆみ、ゴロゴロ感が非常に強く、まぶしくもなり、涙がとまりませんでした。感染力も非常に強く、空気感染はしないものの、涙を拭いたタオルや、目を触った手で触れたものを他の人が触れて、その手で自分の目を触っただけで感染します。また最初は片目しか症状はないのですが、目薬を両目にしただけで、反対側の目に移ってしまいます。大人も含めて幅広い年齢層に見られますが、特に1-5歳の子どもに多いようです。
診断はその症状、周囲の流行状況に加えて、アデノウィルスの検査キット（あまり鋭敏とは言えないようですが）を用います。この病気に有効な点眼薬はありません。補助的に他の感染を防ぐために抗菌点眼薬を使用します。通常2週間程度と長くかかりますが改善します。EKCになったらそのくらいの期間、保育園はお休みするものとお考え下さい（登校・登園許可証が必要です）。
【アレルギーひとくちメモ】
モイゼルト軟膏。アトピー性皮膚炎治療薬のコレクチム軟膏については以前にお話ししたと思います。今ではコレクチム軟膏は生後6か月から使用できることになっています。
さて、今回お話しするモイゼルト軟膏は2022年に発売されました。その有効成分であるジファミラストは、細胞内でcAMPという物質をAMPに分解するホスホジエステラーゼ４(PDE4)という酵素の機能を抑えます。すると細胞内のcAMPの濃度が下がらなくなります。それにより、体内で炎症を起こすサイトカインが減り、炎症を抑えることができます。ステロイドやプロトピックとは異なるメカニズムでアトピー性皮膚炎を改善していきます。そしてステロイドのような皮膚を薄くしてしまう、という副反応はありませんので、使い続けることが可能です。
皮膚炎の炎症が強いときにはステロイドで落ち着かせて、その後にその状態を維持させていくのに使用するのがよいのでは、という意見が多いようです。プロトピックやコレクチムの使い方に似ていますが、プロトピックのような皮膚への刺激感や使用本数の制限はありません。モイゼルト軟膏には成人用として１％、小児（2歳以上）用は0.3%と2種類あります。小児でも１％を使用することは可能ですが、改善したら0.3%への変更を検討することになっています。
